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工法のQ&A
Q.33 平張り式において,のり勾配1:1.5 の場合の設計法がありますか。
のり勾配1:1.5 の施工例はたくさんあります。設計では,かごマットの滑動に対する配慮が必要です。
【解説】
のり勾配が1:1.0 以上の急な勾配における 多段積み工法 については,「鉄線籠型多段積護岸工法」(平10.5)にその設計法が示されています。(多段P4)のり勾配が1:2.0 以上の緩な区間における 平張り工法 については,「鉄線籠型護岸の設計施工技術基凖(案)」(平21.4)に,その設計法が示されています。(基準 P2)従って,質問ののり勾配1:1.5 における設計法は公には示されていません。しかし外国における設計基凖には1:1.5 も含まれており,日本においても事例も多くあるので,敢えて設計法の要点を述べてみることとします。
(1) のり勾配1:1.5 でのすべりに対する安定
W:かごマットの重量(s /m2)
V:地盤に垂直方向分力(s /m2)
H:地盤に平行方向分力(s /m2)
μ:かごマットと地盤間の摩擦係数= 0.65 と仮定する。
F:かごマットと地盤間の摩擦力= V×μ
かご本体が安定するかどうかの限界のり面角度θは,
μV ≧ H
H=W sin θ
V=W cos θより,
μ・W cos θ≧ W sin θ
μ= tan θ
θ= 0.65tan - 1
= 33.0°
ちなみにのり勾配が,
1:1.5 の場合θ= 33.7°> 33°
1:2.0 の場合θ= 26.6°< 33°
となり,
1:1.5 の場合では,厳密にいえばかごマットはのり面を滑落することになります(μ= 0.65)。
(2) すべりに対応する工法
かごマットのすべりに対応する設計は,護岸前面が流水によって洗掘され,根固工(垂れ部)が大きく垂れ下がった状態を予想して安定計算されます。〔図(1)〕すなわち,根固工が洗掘によって垂れ下がった場合には,引張力(P)となってかごマットののり部にも伝達されるので,前述の(H)が大きくなって,かごマットがすべってしまうことにもなります。
そこで,設計では,根固工の基部に(Ln)〔図(2) 〕,または護岸肩の水平部に(Lm)〔図(3) 〕を設定して摩擦力の補強を行い,「すべりの起こらない構造」とすることが考えられています。
(注)
(1)杭打ちによるすべり止め工法は,極力避けるべき工法です。
(2)洗掘によって根固工が垂れ下がった形態を「垂直」に示しました。これは,国交省の技術基凖(平21.4)における,かご網の鉄線の必要径を算定した算出図を参照したものです。(基凖・参考資料 P13)